- 表情推定
- 顔検出
なんばグランド花月で
「笑い」の医学的検証
近大×吉本×オムロン×NTT西日本共同実験参加レポート!
近畿大学様・吉本興業株式会社様・NTT西日本様
HVC-P2
近畿大学様・吉本興業株式会社様・NTT西日本様
2017.03.09公開 / 2017.06.30更新
近畿大学、吉本興業株式会社、オムロン株式会社、西日本電信電話株式会社(NTT西日本)は、「笑い」を医学的検証することで、「笑い」の測定方法および「笑い」の習慣が身体や心理的健康に与える効果を解明するため、オムロンのヒューマンビジョンコンポ 『HVC-P2』などのセンサーを使用して共同研究を行うこととなりました。
「笑い」は人間にとって日常的な動作にも関わらず、その定義が曖昧なため国内外でさほど研究が進んでいません。
また、精神疾患の患者は年々増加しており、厚生労働省は平成22年(2010年)に精神疾患による経済損失は年間約2.7兆円に上ると発表しています。
「笑い」を中心としたエンタテインメント事業を展開する吉本興業と、医学部を持つ近畿大学、顔認識等の画像センシングで高い実績を誇るオムロン、NTT西日本が協力し、「笑い」の力でこの大きな社会問題を解決したいと考えています。
2017年2月より、定期的に検証研究を開始し、平成30年(2018年)10月からは精神疾患の患者に対する臨床研究を行います。
これらの研究を基に、平成33年(2021年)には、「笑い」を活用したストレスマネジメントを実用化し、大阪らしい「笑い」の溢れた新たな治療方法を開発することをめざします。
「笑い」の医学的検証を行うため、日常的な笑いの習慣がもたらす効果を以下の点で研究します。
本研究は、2017~2020年の4年間で4段階に分けて実施を予定しております。
各段階の分析結果をもとに、次段階へのステップアップし、2021年を目標に実用化を目指します。
2017年2月の第一段階では、健常者男女約20名を対象に実証実験が実施されました。
2週間に1度の間隔で吉本興業の「吉本新喜劇」や「漫才」を鑑賞し、鑑賞前後の心理テストや、お笑い鑑賞中の表情の変化やバイタルデータから分析を行います。
多くのメディアにも取り上げられ、注目を集める本研究ですが、オムロンからも被験者として実験に参加させて頂きました!
はたして、一体どんな実験を行っているのか?気になる実験初日の様子をレポートいたします!
実験初日、昼間はいつも大賑わいのグランド花月も、早朝はまだひっそりとしていました。
表のサイネージには既に本日の出演芸人さんが紹介されていて、いつもテレビで見ている方たちの名前がずらり♪
ワクワクが収まりません!
待つこと数分、全員集合したところで実験の事前準備のために会議室へ。
この日は実験初日とのことで、研究の中心となる近畿大学の阪本助教(写真左)・小山教授(写真右)より、 参加者に向けてのご挨拶と、研究の大まかな流れをご説明いただいた後、お笑い鑑賞前の心理テストからスタートしました。
実験対象者は20代学生~60代社会人まで幅広い年齢の男女が集められ、午前と午後に分かれて実験に参加します。
笑う時間や年齢における効果の差も比較できるようになっています。
受ける心理テストはかなりの量でしたが、多角的な情報を集め、どんな心理的効果が得られたのかが分析されます。
笑いのデータ収集だけでなく、比較による心理分析も研究の重要な要素となります。
心理テスト完了後は、いよいよ劇場内へ!
会場では実験の準備は万端!検証に使用するのは、2階席の最前列中央。舞台の全体を見渡せるいい席です。
さて、オムロンの『HVC-P2』はというと…すでに座席の前に取り付けられておりました!
今回実験に使用したのは、『ヒューマンビジョンコンポ (HVC-P2) B5T-007001-010 長距離検出タイプ』です。
『HVC-P2』には、長距離と広角の2タイプのカメラで展開されており、長距離タイプは主に「検出対象が比較的遠距離の場合」に適しています。その分画角は狭くなります。
今回の実験では、センサから座席までの距離はそれほど遠くないのですが、一人毎に表情データを取得するには、画角が狭めの長距離タイプを座席ごとに設置するほうが都合がよかったようです。
場面に合わせてカメラを選べるのも『HVC-P2』のいいところです^^♪
手すりを利用して『HVC-P2』とNTT西日本さんの『マイクロ波センサー』が設置され、足元のPCで制御されています。
『HVC-P2』がずらりと並ぶ姿を前にテンションが上がるオムロン一同…
実際に使用されているのを見るのは、やはり感慨深いですね。
↓↓拡大するとこんな感じです↓↓
『HVC-P2』は、オムロン独自の画像センシング技術『OKAOR Vision』を搭載し、付属のカメラから取得した人の画像情報から、10種類の人の状態を認識することができます。
今回の実験では、主に『顔検出+表情推定』の機能を使用しています。
表情推定機能は、真顔、喜び、驚き、怒り、悲しみの5分類の表情の変化を推定します。
付属のカメラで人の顔画像データを1秒間に3回の頻度で読み取り、目の開き具合・口角の角度・目と鼻・口の位置・頬骨の高さなどから、表情度合いを0~100の実数値で計測することが可能です。
検出したデータはPCに送信され、蓄積されます。
ちなみにこの5つの表情の中でも、『喜び/笑顔』の推定は精度が高いとご好評いただいております^^
また、HVC-P2の下には、NTT西日本さん提供の『マイクロ波センサー』も設置。
マイクロ波で座席に座る人の心拍数や脈拍、呼吸の変化などをセンシングします。
上演中は撮影禁止のため、写真でお伝えすることはできませんが、最初から最後まで爆笑の連続で2時間半ずっと笑いっぱなしでした!
なんとなく腹筋も鍛えられた気が…エクササイズ効果も検証してもらったらいいのでは…?(笑)
お笑い鑑賞後、再び会議室に戻って心理テストを開始。
2度目はテストの量も少なく、サッと答えて実験終了となりました。
今回の実験は2週間に1回の間隔で合計3回行われ、近畿大学にて分析されます。
実験の分析結果をもとに、来年1月予定の第二段階目の実験へと進んでいきます。
「笑い」のストレスマネジメントの実用化については、現在は以下のようなアイデアを検討・協議されているそうです。
参加者の方の「あなたの処方箋は『新喜劇を見ること』みたいな、おもろいことになるんかな。」という感想がとても印象的でした。
笑って楽しんで病気が治る、健康になる。そんな時代が来るのももうすぐかもしれません。
はたしてどんな結果が生まれるのか、2021年の実用化がたのしみですね!